人の命に優劣はない。人の命の価値に軽重はない。どの命も「かけがいのない命」等と言いますが、悲しきかな、現実には人の命にも値段があります。
交通事故で亡くなった場合などには「死亡逸失利益」によって賠償請求できます。死亡逸失利益とは、交通事故等で死亡してしまった場合に、その人が将来得られたであろう収入の減収分をもとにその人の価値を計るというものです。要は、その人が稼ぐお金がその人の命の価値だという考え方です。若い人は長く稼ぐので高い。お医者さんなどの高収入の方はいっぱい稼ぐので、やはり高い。つまり、人の命はもちろん売買市場があるわけではないけれど、必要に応じて価格がつけられているのが現実です。
これって、不動産でも同じようなことが言えます。お家も新しい方が長く使えるので高い。アパートなども、いっぱい家賃が見込めるものの方が高い。そして、やはり不動産でもたとえ実際に売らなくても、必要に応じて価格をつける必要がある。
さて、それってどんな時でしょう?相続税や固定資産税などの課税の根拠となる価格を算定するときが代表的ですね。実は、それだけではありません。相続で、遺産分割をするときに、本当の価格を知りたいときや、親と子や企業オーナーとその企業との同族間売買で税務署に設定価格の妥当性を証明するときなどです。
以前にお話しした通り、相続税の評価額は時価と乖離していることが多いです。したがって、本当に公平に相続を行う場合には、別途不動産鑑定評価などをして、時価を知る必要があります(時価相続)。
他方、同族間売買においても、実際に市場に出さずに売買するので、税務署はその価格が意図的に安く設定されていないか、もしくは高く設定されていないか検討し、認定課税を課す場合があります。その場合にも、売買価格を決める時に別途不動産鑑定評価などにより、その取引価格の妥当性を検証したうえで売買することが有用です。
まあ、不動産の場合、実際の取引が可能かつ、類似の不動産の市場価格を参考にできるという点は、真にプライスレスな人の命と大きく異なる点ではありますが。