前回は遺言書が法的な効力を発揮した例を、実際の判例とともに紹介しました。
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では、いざ遺言書を書こうとしたら、いったいいつ、どんなことに注意しながら作成すれば良いのでしょうか。
第一に注意が必要なのは、「判断能力がしっかりしているうちに書く」ことです。
例えば、認知症の症状が出始めてから作成すると、死後、作成時の判断力の有無が争点となり、遺言書が無効になってしまうケースがあります。そのため、自分の健康状態に少しでも不安がある場合は、事前に医師の診察を受け、診断書を発行しておくなどの対策を取っておくと良いでしょう。
第二に注意すべきは、「遺言書を作成したことを最低1人には伝えておく」ことです。
実際に、相続人同士で遺産の分配を協議した後、金庫から遺言書が見つかり、相続人たちの協議の結果と遺言書の内容が異なっていた、という例もあります。特に、法定相続人以外に遺産を遺したい場合は遺言書が不可欠になるため、自分の意思をきちんと伝えるためにも、遺言書を作成した際は誰かしらにそれを知らせてトラブルを防ぎたいものです。
もともと日本の相続規定には任意規定が多く、それが原因で起こる相続をめぐる争いを軽減するために遺言制度が設けられました。
自分の想いをきちんと遂げると同時に、のこされた家族や親しい人々の間の諍いを防ぐためにも今のうちからしっかり準備しておきたいものですね。
余談ですが、過去の著名人の「遺書」を読んでみると、赤裸々に生前のエピソードが綴られていたりします。
例えば作家の芥川龍之介の遺書は、「僕等人間は一事件の為に容易に自殺などするものではない。僕は過去の生活の総決算の為に自殺するのである。しかしその中でも大事件だつたのは僕が二十九歳の時に秀夫人と罪を犯したことである。僕は罪を犯したことに良心の呵責は感じてゐない。」という文から始まり、筆者の散々な恋愛遍歴を明らかにしていきます。
こんな「遺書」は、円滑な相続を促すどころか、遺された関係者たちの間に新たないざこざを引き起こしかねませんね…。