前回、不動産の相続税の計算においては、間違っていようとも客観性を担保する上では、現行の評価方法もやむなしとのお話をしました。そして、納税者にとって、概ね低額に評価してもらえるのですから、むしろ、ありがとうです。
しかし、なんと、兄弟間で遺産分割にあたっても、その相続税の財産評価を援用、参考とするケースもあるのです。
実際には、遺産分割協議の中で、「兄貴ぃ~、兄貴が自宅をとるなら、俺にあのマンションくれよ。自宅が5,000万円で、マンション3,000万円だから、現金の2,000万円は俺がみんなもらうね。」なーんて話です。
その、5,000万円、3,000万円は、正しいの?ということです。ちなみに、現金の時価はそのままの2,000万円に変わりありません。前回お話しした通り、相続税の評価額と時価とは必ずしも一致していません。したがって、その分割が公平かどうかは、時価を算定してみないとわからないのです。
でも、誰もいままで、それを問題としていないし、そんなことが書いてある本もないですよ。税理士さんだって、登記の司法書士さんだってそんなことは言いません。もちろんです。時価を算定しなおすことは、時間も費用も掛かりますし、敢えて別の評価をていじすることで相続人間の対立を招きかねません。税理士さんや司法書士さんにとっても厄介が増えるだけで、自らの業務に支障が出るだけなのです。
何より、相続人さんにとっても、それを知ることでトラブルが起こるのは問題です。
知らぬが仏。
しかし、それは、時価と違うことを知らないからやっているだけで正しい相続とは言えません。ただ、正しいからといって、確かにトラブルを起こすことをあえてすることはない。
トラブルを起こさず正しい相続をするために、遺言等によりお父さんが生きているうちに時価を把握し、お父さんの意志により相続計画を立てるのも一つの方法だと思います。まだまだ、私たちがお手伝いすることはたくさんありそうですね。